はじめて能楽

2023年7月9日

このページにたどり着いた方の中には、初めて能楽(能・狂言)に興味を持った方もいらっしゃるかと思います。
ここでは、主に初心者の方向けに現代の能楽について簡単に説明します。

はじめに

能楽(能・狂言)は、堅苦しくてとっつきにくいと考えている方も多いと思います。
それは、初心者ならば、はっきり言ってその通りだと思います。
なぜなら、能楽は長らく公的な保護のもと育ってきたうえ、演劇の形を取る主要芸能としては日本で一番古いからです。
能楽に関心を持っていただいただけでもありがとうございます。

まず、能楽(能・狂言)という表記について説明しましょう。
能楽とは能と狂言の総称で、明治時代初期に「能楽社」(のうがくしゃ)という劇場・組織が作られて以降大きく広まりました。
それまで能楽は「猿楽」(さるがく)または「申楽」(さるがく)と呼ばれており、字面があまりよろしくないと考えられていました。
現代では「能楽と能は何が違うのか」という質問がよくありますが、能は能楽の一部と考えてください。

現代における能楽のあり方

能楽の歴史」ページにも書いたとおり、能楽は武家に保護されている時代は長らく続きました。
保護の具体的な形は、能役者を雇って給金を払う代わりに、能楽を演じさせたり自分が舞えるよう教えさせる、というものです。

実は、その構造は能楽師(ここからは能役者に代えてこう呼びます)の立ち位置が変化しただけで、根本的なものは変わっていません。
というのも、能楽師のほとんどは、能を素人に教える授業料によって生計を立て、舞台の出演料はその一部にすぎないからです。
能楽師のうち、能を演じることのみで生計を立てられている演者はごく一部だと考えられています。
つまり、能楽師の生業が教えることと演じることで成り立っていることには変わりないのです。

なお、狂言の場合は公演経費が安く済むことから採算性が高く、
また能楽師に呼ばれる仕事も数多いことから狂言を演じるだけ生計を立てている演者は多いと考えられます。
実際、能の教室・講座に比べて狂言の講座というものは多くありません。

能楽を楽しむ方法

これまで述べてきたように、能を楽しむ方法は二つあります。

一つは、能を「見る」、鑑賞するという方法です。
他の芸能と同じように、演劇として楽しむことです。

特に狂言の場合は室町時代の話し言葉が基礎ですから、現代と言い回しが異なるものの
初見でも大体は理解することができますので、チケットを購入して気軽に観に行くことが可能です。

一方、能は室町時代の書き言葉、しかも歴史物が基礎となっているため、
台本(出版されているものを「謡本」(うたいぼん)といいます)を読み解くだけでも苦労します。
また、能は自らが演じてストーリーを理解している前提で演じられてきたものなので、内容面での予習はほぼ必須といえます。
ただし、国立能楽堂などの公共劇場を中心として、字幕装置を設けたりプログラムを配布するなど
能を鑑賞する初心者に向けた取り組みが普及しつつあることも記しておきます。


もう一つは、能を「演じる」という方法です。

能は、「武家の式楽」として保護される段階で、武士が自ら舞って教養を高める目的で成長してきました。
そのため、能の音楽性や身体的魅力は、自ら演じた経験がないと充分理解できない面が大きくあります。

そこで、各地の能楽堂などでは能を演じる体験会・ワークショップを数多く開催しています。
これは単に能楽を演じる人口を増やす(ことで能楽師の仕事を増やす)だけでなく、
演じてみることで能をより楽しむ経験を積むことが出来るのです。

ですから、そのようなイベントが開催されている場合は、ぜひ参加してみてください。
能の魅力をもっと強く感じられるようになります。素人目にはただ単調に見える演技も、
自ら演じた経験があればどれだけ高度な技術で舞い、謡われているかがよくわかります。

チケットの入手方法

最後に、チケットの入手方法について説明します。

現代の能楽の総本山ともいえる国立能楽堂では、他の施設と共用の「国立劇場チケットセンター」がチケットを取り扱います。
他の公共能楽堂でも、自らチケット販売所を設けていることが多いです。

一方、私立の能楽堂や能楽師、イベンター主催の公演は、それぞれの公演によって窓口が異なりますので、販売所をよく確かめてください。

以上、参考になれば幸いです。

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