歌舞伎の良席

2023年7月9日

ここでは、歌舞伎の良席とは何かについて説明します。

良席はどこにあるか

良い席がどれか、というのは難しい問題です。

歌舞伎公演の場合は殆どの場合等級が細かく分かれており、その価格に見合った価値が提供されていることが多いです。
特に初心者ですと、思ったより高額の観劇料に驚かれるかもしれませんが、まずは自分が購入したいと思った等級の「一つ上」を狙ってみましょう。
(自分にフィットする価格帯が特等や一等だった場合はそのままにしましょう。最高額の桟敷席は見え方が全く異なるので別の機会がおすすめです。)

結局、具体的にどの席が良い席かは自分の感覚と自分の情報収集に頼ることになります。
例えば私がここに「この席がよい」と書けば、たちまちその席が人気になってしまうことでしょう。
友人にこっそり教えるならまだしも、誰もが見る可能性のある媒体で良席を具体的に示すことはやめておきましょう。

ただし、歌舞伎界にはいくつかの「言い伝え」がありますので、それを紹介しておきましょう。

・「とちり席」。いろはにほへとちり、と数えて前から7,8,9列目のこと。劇場の構造によってはこの列が良席とは限りません。

・「かぶりつき」。劇場1階席最前列。役者との距離はもっとも短いですが、首が痛くなるほか舞台全体を見るには不向きです。

・「花横」。花道横の略。劇場本舞台から劇場最後方の出入口(鳥屋/とや)にかけて通路があり、これを「花道」といいます。
 役者が舞台への出入りに使うので座席間近を通り、風や揺れ、息づかい、香りなどを感じられることがあります。
 ただし、演目によっては花道を使わないこともあります。

・「どぶ席」「花外」。花道から舞台向かって左側の席。花道での演技が背中側になるので敬遠されがちですが、花道からの絶対的距離は近いのでメリットはあります。

・「花道七三」(はなみちしちさん)。花道の長さのうち7:3の比率(3が舞台側。というのは建前で、実際の比率は違います)の場所で重要な演技が行われます。
 この場所には「すっぽん」(役者の昇降装置)も設置されており、一部の演目では特に重要な役割を果たします。
 歌舞伎に対応した劇場は「花道七三」がほとんどの場所から見えるよう設計されています。

・花道での演技をたっぷり見たいなら、1階席に限ります。2階より上の座席を買って「花道が見えない!」というのは野暮です。

・逆に、2階・3階の西側・下手側(舞台に向かって左側)の桟敷席は花道が見えない前提で安売りされていることがあります。

・天皇陛下や総理大臣などのVIPが観覧される際の座席は「2階席最前列中央」です。

・3階席は劇場から最も遠く、肉眼では役者の姿が豆粒のようにしか見えませんが、チケットが安いため一見さんの初心者はもちろん
 リピーターや見巧者(みごうしゃ。歌舞伎の熱心なファン)がたびたび訪れます。ファッションもネルシャツにジーンズなどカジュアルです。
 この位置(または4階の幕見席)からかけ声をかける人を役者から見て「大向こう」(おおむこう)といいます。
(※かけ声には一定のきまりや方法があります。初心者はかけ声をかけないでください)

...意外とたくさん書いてしまいましたね。以上、参考になれば幸いです。

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